快眠コラム

睡眠中の口呼吸を改善し、風邪をひきやすい季節を乗り切ろう!

風邪をひきやすい冬の到来。今年は例年心配の種であるインフルエンザに加えて新型コロナウイルスもあるので、これまで以上に気を引き締めて予防対策をとりたいところです。
身体の健康を守るという意味において、「良質な睡眠」というキーワードは欠かせません。
たっぷり眠る時間を確保することはもちろんですが、その質にもこだわる必要があります。
睡眠力は免疫力とイコールだと私は考えているので、免疫力アップのためには日々の適切な睡眠が大切です。

睡眠時の口呼吸による影響

日中は口を閉じて鼻呼吸をしている人が多いですが、就寝中はぽかんと口を開けて口呼吸になってしまっている方が少なくありません。鼻は鼻毛がフィルターの役割をして身体に異物が入ることを防いでくれる役割がありますが、口呼吸の場合、就寝中は唾液の分泌が減るため様々な物質が口から体内に入り込んでしまう可能性が考えられます。また、口から入る冷気が肺を冷やして睡眠の質を低下させるという指摘もあるのです。起床時に口渇が気になる、喉が痛む、強い口臭があるなどの症状がある場合は、就寝時に口呼吸になってしまっているかもしれません。マスクをする、枕が低すぎないかを見直すなど、口呼吸にならないための対策をとりましょう。

睡眠時無呼吸症候群やいびきの影響について

もしも一緒に住んでいる人からいびきを指摘されたら、さらに注意が必要です。いびきは本人の睡眠の質を低下させるだけでなく、同居している方の睡眠を妨げる要因となることも。
1人暮らしの方の場合はなかなか自分のいびきに気が付きにくいですが、どれだけ眠っても眠った気がせず日中過度に眠気がある、日中頭が重くて痛い、起床時に喉が渇いているなどがある場合は見逃せない兆候です。横向きで眠る、就寝直前までお酒を摂取しない、高すぎない枕を使う、肥満を解消するなど、いびきを改善するための対策を取り入れましょう。
とはいえ、飲酒や疲れなどで誰でもいびきをかくことはあります。こういった一過性のものの場合はあまり深刻に心配しなくて大丈夫です。
しかし、大きないびきをかいていて、その音が突然ピタリと止まってしまうときには「睡眠時無呼吸症候群」が疑われます。睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)とは、10秒以上の呼吸停止があり、この状態が一晩に30回以上、あるいは1時間に5回以上あると睡眠時無呼吸症候群です。そして、1時間あたり15回を超えると中等症、30回を超えると重症と考えられます。
この場合、深い睡眠をとることができないので、日中に耐え難いほどの強い眠気を感じて集中力が低下、さらに繰り返される低酸素状態と睡眠不足の状態のため疲労回復できず、免疫機能が低下、自律神経の働きも乱れ、放置しておくと全身に悪影響が及されてしまうことが懸念されます。さらに、それだけではありません。SASの最大の問題点は、この病気が他の病気の起因になってしまうことです。SASは呼吸を再開するたびに心臓や血管に過度の負担がかかるので心拍数も血圧が上がり、高血圧などの生活習慣病や心筋梗塞などの心疾患、脳梗塞、脂質異常症のリスクが高まることが指摘されています。
SASの原因は主に肥満だと思われる方が多いのですが、実はそれだけではありません。アゴが小さい、小顔で首が短くて太いとなりやすいことも原因になることが分かっています。疑わしい症状がある場合は、放置せずに睡眠外来や耳鼻咽喉科などで診てもらう必要があるでしょう。

睡眠時無呼吸症候群やいびきの影響について

睡眠時無呼吸症候群の改善方法

SASの改善のためには、肥満の方であれば減量すること。そして、就寝前の飲酒は喉の筋肉を弛緩させるので避けたほうが良いでしょう。
効果的なグッズとしてCPAP(シーパップ)と呼ばれる鼻マスク型の呼吸器が一般的に知られています。CPAPは、少し強い圧力で空気を送り込み、気道を広げて呼吸を楽にする装置のことです。横向き寝で眠ることや寝具環境を整えること、ストレスを溜め込まないようにすることもすぐに出来る対策として併せて試みましょう。

改善による効果

SASが改善されると深い睡眠が得られるようになり、睡眠の質が高まります。ぐっすり眠れるようになること、つまり睡眠の質が高まることによって日中の主観的健康感やクオリティ・オブ・ライフ(QOL)が向上することは、海外の研究によって報告されており、起床時の頭や身体の痛み、だるさから解放され、熟睡できていた子供の頃のように清々しい気持ちで目覚め、爽やかな朝を迎えることができるのです。
前日の疲れを持ち越さないだけでなく、さらに頑張るためのエネルギーが十分に補充されている状態なので、心身ともに活力がみなぎり、仕事も家事もハイパフォーマンスが叶います。そして何よりも、快眠は心身の免疫力を強化し、病気を予防する力を秘めているのです。睡眠に問題があると、風邪、2型糖尿病発症、肥満、高血圧、生活習慣病、がん、認知症、精神疾患などの罹患率や死亡率を高めることが、これまでの睡眠疫学の様々な研究からサイエンティフィックに明かされています。睡眠の質は健康の質そのものであり、ひいては人生の質といっても過言ではないでしょう。睡眠中に体、心、脳がしっかりと休息できるよう、改善につながる習慣は積極的に取り入れると同時に、睡眠環境を整え、より充実した睡眠時間を過ごしてくださいね。

改善による効果

執筆者
友野 なお さん

睡眠コンサルタント
産業心理カウンセラー

友野 なお さん

経 歴

  • 株式会社SEA Trinity 代表取締役
  • 千葉大学大学院
    医学薬学府 先進予防医学 医学博士課程
  • 順天堂大学大学院
    スポーツ健康科学研究科 修士
  • 日本公衆衛生学会 / 日本睡眠学会 /
    日本睡眠環境学会  正会員
「社会予防医学」「社会疫学」のフィールドにおける睡眠を研究し、健康寿命の延伸、健康格差の縮小を目指す。自身が睡眠を改善したことにより、15㎏以上のダイエット、さらに体質改善に成功した経験から科学的に睡眠を学んだのち、睡眠の専門家として全国にリバウンドしない快眠メソッドを伝授。 健康理念として「睡眠」「食事」「運動」を三位一体と考え、長年レシピ開発に携わり、ヨガのインストラクターの資格も保有。