快眠コラム

正しい睡眠で疲労回復を目指す!快眠に繋がる過ごし方

2020年は新型コロナウイルスの影響により環境が大きく変化し、経験したことのない不安や強いストレスからこれまで以上に睡眠に悩む方が多い1年でした。 疲れやストレス、そういったネガティブな要素を2021年に持ち越さないために、日々正しい睡眠をとることが大切です。

疲労の原因と睡眠の重要性

疲労の原因と睡眠の重要性

疲労は脳が発する「休んで!」という警告アラーム。痛みや熱のように定量化できず客観的には分かりづらいため本人でさえ気が付かず、知らず知らずのうちにどんどん蓄積して、ある日突然、深刻なトラブルに見舞われるという可能性もあるのです。 疲労の原因は活性酸素による細胞の損傷であり、疲労回復のためにはダメージが及んだ細胞が元通りに修復されることが必要になります。そのプロセスで欠かすことができないのが「質の高い睡眠」なのです。

また、長引く疲労の背景には自律神経のバランスの乱れが指摘されています。自律神経は電線のように私たちの全身にくまなく張り巡らされていて、生命維持に必要な呼吸や心臓をはじめとする内臓の働き、血液循環、ホルモンの分泌、体温の調節、消化吸収活動など全ての機能をコントロールしている神経のことです。これらの機能を脳へフィードバックする情報ネットワーク役を担っており、まさに人間の生命活動を維持する、いわば全身の「操縦士」のような存在といっても過言ではありません。

この自律神経は、昼間の神経とも呼ばれるアクセル役の「交感神経」と、夜の神経とも呼ばれるブレーキ役である「副交感神経」の対照的な働きをする2つの神経系統から成り立っており、この2つの神経がシーソーのようにバランスをとり合って12時間交代で逆方向に働くことで体内の状態の維持、調節のバランスを保っています。どちらかが優位に働くときは、どちらかが低くなり、その働きは時間によって変化しているのです。

例えば、交感神経は緊張や興奮、運動、覚醒を司るため、日中の意欲的な活動に重要であり、夜は休息、リラックス、睡眠を司る副交感神経にシフトすることで体内のバランスをとっています。 しかし、現代は24時間社会・デジタル社会・ストレス社会などの社会的背景により、夜になっても興奮モードが収まらず、副交感神経が優位になりづらいため睡眠トラブルを抱える人が増えているのです。
就寝時刻ギリギリまで仕事をしていたり、パソコンやスマートフォンからブルーライトを浴びていたりすると、疲労回復を促すような眠り方からはどんどん遠ざかってしまいます。自律神経のバランスが乱れてしまうと睡眠問題だけでなく、めまい、震え、多汗、立ちくらみ、耳鳴り、吐き気、頭痛、微熱、イライラ、落ち込みなどというような自律神経失調症の症状など様々な不定愁訴にもつながってしまう可能性もあるので注意が必要です。

快眠につながる
朝・昼・夜の良い過ごし方

快眠につながる朝・昼・夜の良い過ごし方

・朝 私たちの脳にあるマスタークロック、「体内時計」は1日平均周期24時間10分の時間を刻んでおり、地球軸の時間とは10分間のズレがあります。この僅かなズレを放置したまま1週間過ごすと、時間のズレは1時間10分にもなります。2つの間の時間ズレが大きくなるほど心身に悪影響が及ぼされるので、毎日地球時刻に合わせるために10分間体内時計を前進させ、時間ズレをなくすための微調整を行う必要があるのです。

その方法が「光」。目から光が入ることで体内時計がリセットされ、体内時計と地球時刻の間にあるズレを解消してくれます。同時に、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がストップし、約14~16時間後に眠気が訪れるようタイマーの予約がセットされる作用も得られるのです。 晴れた日の屋外では100,000ルクス、曇りの日の屋外は10,000ルクス、雨の日の屋外は5000ルクス、東や南に窓がある場合の晴れた日の屋内は2500ルクス程度の明るさがあります。体内時計リセットのためには光の明るさとして2500ルクス以上が必要ですが、雨が降っているときでも3000~5000ルクスはあるので、天候に関わらず起床後は真っ先に空を見上げるようにしましょう。

・昼 私たちは恒常性維持の働きによっても夜の良質な睡眠が促されます。従って、夜にかけて「上手に疲れを溜めること」も大切です。昼間はなるべく意欲的に活動しましょう。時間を確保して運動をすることも大切ですが、それ以外の日常的な動き、例えば歩くことや話すこと、笑うこと、家事をすることなど、全ての動きをテキパキこなすだけでも活動量は変わります。そしてなるべく明るい環境で過ごすこと。コロナの影響で外出を控えたい方も多いと思いますが、昼間は部屋のカーテンを全部開けたり、リビングには明るくて白い照明を用いたりして、暗い夜との光のメリハリをつけるようにしましょう。

・夜 パソコンやスマートフォンなどから発せられるブルーライトは、脳の中の体内時計が位置する場所である「視交叉上核」で感知されることにより、メラトニンの分泌が低下し、なかなか寝付けない「入眠困難」や、朝までしっかりと眠れない「睡眠維持困難」が生じてしまうなど、睡眠に大きな悪影響を与えるので要注意です。就寝30分~1時間前にはパソコンを閉じる、スマートフォンを手放すといった習慣をつけることで、熟睡レベルをぐっと高めるができます。同時に、就寝1時間前になったら空間の照明をやや暗めで暖色系の照明に切り替えることも大切なポイント。調光可能な照明器具や間接照明、アロマキャンドルなどを用いて光環境を完全な夜モードにシフトすることで、空間から脳へ眠る準備が始まったことをお知らせしてあげましょう。

最後に

年末年始のような連休は、つい気が緩んで夜型になってしまうなど生活のリズムが乱れやすくなります。疲労を回復させ、心身ともに健康で、前向きな気持ちで1年をスタートさせるためにも、ぜひ快眠につながる1日の過ごし方を意識しながら生活をしてくださいね。

執筆者
友野 なお さん

睡眠コンサルタント
産業心理カウンセラー

友野 なお さん

経 歴

  • 株式会社SEA Trinity 代表取締役
  • 千葉大学大学院
    医学薬学府 先進予防医学 医学博士課程
  • 順天堂大学大学院
    スポーツ健康科学研究科 修士
  • 日本公衆衛生学会 / 日本睡眠学会 /
    日本睡眠環境学会  正会員
「社会予防医学」「社会疫学」のフィールドにおける睡眠を研究し、健康寿命の延伸、健康格差の縮小を目指す。自身が睡眠を改善したことにより、15㎏以上のダイエット、さらに体質改善に成功した経験から科学的に睡眠を学んだのち、睡眠の専門家として全国にリバウンドしない快眠メソッドを伝授。 健康理念として「睡眠」「食事」「運動」を三位一体と考え、長年レシピ開発に携わり、ヨガのインストラクターの資格も保有。