快眠コラム

睡眠の質を高める飲食とは?睡眠力を高めてより健康になる食事法

心身の免疫力に直結する睡眠力を育むには、体の中に取り入れる食べ物や飲み物の影響について知っておく必要があります。
今回は快眠につながる夕食について、ご紹介しましょう。

寝る前におすすめの快眠を促す食べ物

寝る前におすすめの快眠を促す食べ物

夕食は、極力ヘルシーな物が好ましく、脂質は摂り過ぎないようにすることが大切です。

食材としては納豆がおすすめ。納豆に含まれるネバネバの成分、「ナットウキナーゼ」は血栓を生成する「フィブリン」を溶解してくれます。従って、夕飯時に食べることによって、就寝してから翌朝までじっくり体内で働き、睡眠中にコップ1杯分の汗をかいてドロドロに固まりやすくなった血液が固まるのを防いでくれる働きをしてくれるのです。

さらに、ビタミンB群を多く含んでおり、睡眠のレム、ノンレムの睡眠リズムを安定させてくれるという指摘も。納豆はそのまま食べても良いですが、疲労回復、神経の鎮静化に効果があるネギを刻んで加えると、さらなる安眠効果が期待できるでしょう。

夕食の正しいタイミングとは

夕食の正しいタイミングとは

夕食は食べる「内容」もさることながら、食べる「時間」も非常に重要です。就寝時刻から逆算して3~4時間前までに食べ終えておくのが理想的なスケジュールですが、帰宅後の21時以降に夕食という方も多いのではないでしょうか。

人によっては「23時頃にやっと夕食にありつけます」とおっしゃる方もいますが、これはもはや「夕食」ではなく、「夜食」の域に入っています。何故、3~4時間前に食べ終えていないといけないかというと、食べたものを消化するのに少なくともそのくらいの時間がかかるからです。

スムーズな眠りに入るとき、私たちの深部体温はなだらかに下がっていき、副交感神経のスイッチが入って全身がリラックスモードになっておやすみ支度が整います。ところが、食事をすることで、食べたものを消化しようと胃腸などの消化器官が活発に働きはじめ、せっかく下がりはじめた深部体温が上昇し、スムーズな入眠を妨げてしまうのです。就寝直前の食事を控えることは、消化管や内分泌系を休ませる意味で、とても重要なのです。

遅くなる時の食事について

もし、どうしても遅くなってしまう場合は、夕食を2回に分ける「分食」を取り入れる方法がおすすめです。

18時~19時頃、もうひと頑張りの前に10分程度時間をつくっておにぎりなどお腹に溜まるものを食べましょう。そして、帰宅後には消化に良いスープや温野菜、ヨーグルトなどを少量食べ、お腹を満たします。 しかし、ここで注意したいことが1点。ダイエットをしている方は食べずに我慢して就寝してしまおうと考える方が多いのですが、実は、人は空腹過ぎても眠れません。

空腹時は覚醒維持をコントロールする神経ペプチドである「オレキシン」が増えることで覚醒レベルが高まって興奮します。これは何故かというと、動物において空腹時は緊急事態であり、覚醒レベルを高めて食物を狩るための行動を起こす必要があるためです。良質な睡眠がとれないことが肥満の原因になることは多くの先行研究が明らかにしている事実なので、ダイエットをしている方こそ空腹を我慢せず、消化に良いものを摂ってぐっすり眠るようにしましょう。

寝る前にNGな飲み物・食べ物

寝る前にNGな飲み物・食べ物

揚げ物などの脂質の多いものや、ケーキなどの糖質の高いものは消化に時間がかかり内臓への負担が大きいので、夜の食べ物として不向きです。食べる必要がある場合には、就寝までに消化器官が落ちつくための十分な時間が確保できるよう、早めの時間に食べるようにしましょう。

また、夜にNGな飲み物の代表といえば「カフェイン含有飲料」です。カフェインはノンレム睡眠の発現中枢がある腹外側視索前野の活動を抑制すること、そして利尿作用を起こすことなどにより、入眠困難や中途覚醒を増加させることが明らかになっています。夜の主睡眠のためには夕方以降の摂取は控えたほうが良いでしょう。

夕方以降は、白湯やルイボスティー、そば茶、カフェインが含有されていないハーブティーなど、カフェインレスな飲み物を選ぶようにすることがおすすめです。さらに、温かい飲み物のほうがリラックス効果は高まるので、生姜湯などもおすすめ。特にご高齢の方の場合は長い時間カフェインの覚醒作用が持続するため、注意が必要です。

気を付けていても、無意識に飲んでしまいがちなのが夕飯時の緑茶。緑茶の甘味成分でもあるテアニンには鎮静作用があるため、気持ちが安らぎリラックスできますが、一方で緑茶にはカフェインが多く含まれていることを忘れないでください。夕食のお供には、ノンカフェインの麦茶や甜茶などが良いでしょう。

食事と睡眠には隠れたつながりがたくさんあり、日々の食事の中には快眠を導くヒントがたくさん秘められています。睡眠の環境を見直すことは大事ですが、それでも睡眠が改善されない場合には、日々の食生活もぜひ1度振り返ってみてくださいね。

執筆者
友野 なお さん

睡眠コンサルタント
産業心理カウンセラー

友野 なお さん

経 歴

  • 株式会社SEA Trinity 代表取締役
  • 千葉大学大学院
    医学薬学府 先進予防医学 医学博士課程
  • 順天堂大学大学院
    スポーツ健康科学研究科 修士
  • 日本公衆衛生学会 / 日本睡眠学会 /
    日本睡眠環境学会  正会員
「社会予防医学」「社会疫学」のフィールドにおける睡眠を研究し、健康寿命の延伸、健康格差の縮小を目指す。自身が睡眠を改善したことにより、15㎏以上のダイエット、さらに体質改善に成功した経験から科学的に睡眠を学んだのち、睡眠の専門家として全国にリバウンドしない快眠メソッドを伝授。 健康理念として「睡眠」「食事」「運動」を三位一体と考え、長年レシピ開発に携わり、ヨガのインストラクターの資格も保有。